2016年4月20日水曜日

ヤマタノオロチと速佐須良姫

ヤマタノオロチの話しは、

日本神話の中でもとても有名です。


スサノヲノミコトが頭が八つ、尾が八つの大蛇をやっつけて、

尾から草薙の剣を取り、櫛稲田姫と結ばれるというお話しです。


ホツマツタヱにもこのヤマタノオロチの話しがありますが、

記紀に見るような怪物伝説とは違って、

恨みや妬みが激しくなって拗けてしまった人のことをオロチと呼んでいて、


あくまで人間の心が

恐ろしいものへと変化した状態として描かれているのです。


今回はこのホツマツタヱに描かれている

オロチと化してしまった姫君の物語が

今の時代に何を語りかけているのかを、

考えてみたいと思います。


この話の中で重要な神々は、

大祓の祝詞に登場する

祓戸四柱の神です。


全国の神社で6月30日と12月31に執り行われる

大祓の儀式で読み上げられる祝詞に登場する、


瀬織津姫、

速開津姫、

気吹戸主、

速佐須良姫、

この祓戸四柱の神ですが、


ホツマツタヱの物語の中でどの様に

人の心に宿る「魔」を祓っていったのかを見ると、

普段の生活の中で気を付けたい事柄が見えてくると思います。


時はアマテルが君として世を治めていたころ、

太陽と月になぞらえて

東西南北にそれぞれスケ、内侍、下侍と合わせて

12人の局が仕えることになりました。


瀬織津姫ホノコは南の局の内侍、

速開津姫アキコは西の局のスケ

速佐須良姫ハヤコは北の局の内侍でした。


速佐須良姫の姉であるモチコ姫はアマテル第一子の

アメノホヒをお生みになります。


速佐須良姫は後の宗像三神である

タケコ(奥津島姫)タキコ(江島姫)タナコ(市杵島姫)を

お生みになります。


速開津姫は第五子のアマツヒコネを

お生みになります。


瀬織津姫は第八子にあたるオシホミミを

お生みになりました。


瀬織津姫は

アマテルがその心に持つ雅に心打たれ

自ら檀上より降りて迎えられ、

オシホミミを皇太子とされた時点で

内宮となったのでした。


世継ぎがとても大切であったこの時代、

内宮に上がった瀬織津姫に対して、

第一子を生んだ北の局のモチコ姫と

その妹である速佐須良姫ハヤコは

次第に妬みをあらわにしていきます。


そういう心もちがスサノヲの荒れた心と響きあいます。


スサノヲはイザナミの生理中に孕んだ子であったことから

汚穢、隈を生まれながらに背負ってしまう運命にありました。


自らの蛮行によって母イザナミを死に追いやってしまった

苦しみからも解き放たれることなく

スサノヲの行いは荒れていくばかりです。


思い通りにならなかった縁談のことなどもあったスサノヲは

北の局に夜な夜な出入りするようになっていました。


スサノヲとのことを瀬織津姫に注意された速佐須良姫は

ある時スサノヲに「男ならば天下をとれ」という一言を言ってしまいます。


そのことも瀬織津姫に知れてしまったモチコ姫と速佐須良姫は

宮中から一旦下がるように諭されます。


モチコ姫と速佐須良姫は妬みが次第に怒りを帯びて、

下がっていた宇佐宮から流離って根の国へと辿り着きます。


一人になったスサノヲはさらに怒り、

瀬織津姫の妹、ハナコ姫が亡くなりかけるほどの事件を起こして

死罪を言い渡されるのですが、

瀬織津姫の温情により流離いの刑に減刑され、

根の国へと流れつきます。


一方根の国ではアマテルに背く不穏な出来事が起こっていました。


概要は次のようになります。


イザナギの弟でモチコ姫と速佐須良姫の父であるクラキネが

マスヒトとして治めていたときに、

その臣であったシラヒトの推薦でコクミの妹のサシミ女を妻としました。


サシミ女はクラコ姫を生み、喜んだクラキネは

コクミを隣国サホコの国の副マスヒトに任命します。


そのクラコ姫をシラヒトが妻としますが、

あろうことか母のサシミ女とも関係を持つようになります。


そしてクラキネが亡くなるときに

シラヒトを根の国のマスヒトに指名し、

後にマスヒトとなったシラヒトは

サシミ女、クラコ姫とのいざこざを隠すため

二人ともコクミのもとへ追いやります。


そしてコクミはサシミ女、クラコ姫を犯し

我が物としてしまうという非道が行われたのでした。


そのような者たちに国が治められるはずもなく、

一旦は捕えられて死刑を言い渡されていたのですが、


サホコ国の新しいマスヒト、アメオシヒが

モチコ姫の進言で寡婦のクラコ姫を妻に迎え入れ、

その祝いの恩赦によって減刑されたシラヒト、コクミを

また役職につかせて、

オロチと化したモチコ姫、速佐須良姫の下で

アマテルカミに背くオロチ集団を

形成していってしまうのでした。


また別のオロチの一味をアマテルが捕えた時に

瀬織津姫が鏡を持ち、

速開津姫が剣を持って取り調べたところ、

「根のマスヒトが功績を立てたら国の守にしてやるぞ」

「これはスサノヲの言葉だぞ」と言うのです。


そしてそのオロチ達の反乱の根本原因になった

根の国のオロチ、モチコ姫、速佐須良姫達を

討つように任命されたのが気吹戸主でした。


気吹戸主が向かう道中で

蓑、笠、剣を投げ出して、

泣きながら土下座をして

自分の愚かさからの過ちを懺悔するスサノヲに出会います。


その二人が軍勢を率いてオロチと化した速佐須良姫たちを討つのです。


祓戸の神たちの物語は宮中に渦巻いた人の恨みや妬みを祓ったことと、

スサノヲが生まれながらに背負ってしまった穢れを祓ったことの

二つの側面が描かれているようです。


そしてホツマツタヱの読み方にもよるのですが、

速佐須良姫がお生みになった三人の姫たちは

スサノヲの子だったのではないでしょうか。


一度は結ばれ、愛し合った相手が

自分を討ちにやって来たのを見たとき、

速佐須良姫は自分の辿った運命の意味を

悟られたのではないかと思います。


その余りにも悲しい性を生き抜いて、

愛する人に討たれ、

神上がられた後も、

祓戸の神として人々から崇敬される速佐須良姫が、


オロチになるのも

カミになるのも

紙一重なのだと教えて下さっているように思います。


スサノヲは自らの過ちに気づいたことで

自らの穢れを断ち切ることになりました。


それはとても辛いことです。


速佐須良姫は自らの穢れに飲み込まれてしまったことで、

自らの命を落としてその穢れを祓う生き方を選択してしまったのでした。


妬みや恨みに飲み込まれてしまった人間が、

本当に恐ろしいことをしてしまうのは、

今の世の中を見てもまさにその通りです。


自分の「魔」に飲み込まれてしまうと

そのように物事が流れていくまで止めることはできなくなってしまうのです。


速佐須良姫の物語はその悲しみを伝えていると思います。

めくりあわせの かみひとえ

わたすことのは むすふはな

めのかなしきを うつしたす

ちるはなひらと あめのおと


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